私の芭蕉布研究

   芭蕉布と出逢ったのは1998年、東京・六本木で開催された「八重山・竹富町の織物」展のオープニングの際である。芭蕉布の光沢に気づいたとき、私の故郷ベルギーのフランダース地方の亜麻(リネン)布を思い出した。しかし、どちらの織物(布)にも共通しているのはその光沢だけでない。両地域の人々の生活に根ざした長い歴史もがある。そして、私は生まれて初めて、そんな植物繊維から織られた布に惹かれたのである。亜麻布についての知識は少しだけあったが、展示会で解説された「バナナの木の繊維」を使った手織りの芭蕉布のことは、私にとって全く未知の世界であった。そしてその展示会のオープニングの際、いつの間にかテーブルが壁にどかされ、沖縄県から来た関係者が農具を手に持ち、明るく歌いながら踊り始めた。当時、東京で働いていた私は、大自然を感じさせる芭蕉布の世界と自分の慌ただしい大都会の生活との間に天と地ほどの大きなギャップを感じ、芭蕉布は私に強い印象を刻んだ。それまで特に意識していなかった「沖縄」と新しく出会った「芭蕉布」に対する複雑な思いが、沖縄へ移住するきっかけとなり、私の芭蕉布研究の契機となったような気がする。

芭蕉布研究に関する出版実績

・2022年(書籍出版・新星出版)

 琉球列島における芭蕉布文化の起源を探る ISBN 978-4-910937-04-5 C3072 (日本語)

・2007年(書籍出版・ベルギーの Leuven University Press〔ルーヴェン大学出版社〕)

 The Origins of Banana-fibre Cloth in the Ryukyus, Japan. ISBN 978-9058676146 (英語)

〔琉球列島における芭蕉布の起源〕

・2006年3月(博士論文発表・ベルギーのルーヴェン・カトリック大学)

 Bashofu: Banana-fibre Cloth and its Transformations of Usage and Meaning across Boundaries of Place and Time in the Ryukyu Archipelago〔琉球列島における場所と時代の境界を越えた芭蕉布の用途と意義の変容について〕(英語論文)

2004年 「琉球列島における芭蕉布と糸芭蕉について」『沖縄文化』Vol.39:1

2003年 「芭蕉布の研究について」『沖縄染織研究会通信』Vol.29

2002年 「糸芭蕉と芭蕉布について」『月刊 染織α』No.259,10月号 (70-72)

2002年 「八重山諸島に見られる芭蕉織り」『沖縄・八重山文化研究会会報』Vol.127

2002年 「芭蕉布 島紀行」(5回シリーズ)『沖縄タイムス』文化欄