芭蕉布作りへの挑戦
本ウェブサイトの作成者は芭蕉布織りの素人でありながら人生一度だけでもいいけれど、
芭蕉布を織る全作業工程を体験してみたいと思っています。
自分の記録のために、このページでは個人的な体験をまとめます。
沖縄では糸芭蕉のことを「ウー」と呼びます。
動画と写真はこちら
講師・指導者:芭蕉布作家 (浅井)金城由美子氏(沖縄県大宜味村)
① 糸芭蕉畑の手入れ
作業内容:芯止めと葉落とし
季節としては、5月・7月・9月が良い = 葉っぱが成長する時期
ポイント
事前の準備:鎌、手袋、古着、長靴、帽子、首に巻く古いタオル
糸芭蕉から出る汁は、服に洗っても落ちない茶色なシミを残すので、汚れてもいい古着を着たほうがよい。
ハブ、蟻や蜂がいる可能性があるので、長靴をはいて、手袋を着て、首にタオルを巻いて防御する。
芯止めの方法:偽茎の上部(緑色の葉っぱが出るところの直ぐ下)を鎌で一気に切り落とすこと
葉倒しだけ:緑の葉っぱなどを、偽茎と近いところ(葉っぱと茎の間)に鎌を入れて、上から斜め下へ鎌で一気に切り落とす。方向が合ったら、とても切りやすい。切り倒した葉っぱを2,3に切って、地面に枯らせる。又は、その葉っぱを別の作物の下にひくと雑草が生えにくい。
作業の記録
2021年6月・9月・10月(季節外れ)
感想
簡単で、楽しい作業だと思っている。
② ウー倒し
糸芭蕉の手入れ季節は11月~2月の間が良い。
3月からは糸芭蕉はまた元気になりすぎることと、皮を剥いだ後早く乾燥しすぎたり、ウーを炊いた後早く腐ったりするので、沖縄の冬の間が最適だと言われている。
ポイント
開花直前の親株を切り倒した方が最適である。又は、開花の直後でも良い。
判断が難しい場合は、とにかく偽茎の表面が茶色く枯れた状態になっていないとだめ。
偽茎の表面がまだ青いときは、植物はまだ十分に成長していないことで、その繊維は固い!
切り倒した後、偽茎からすぐに芯が出たら、まだ若い植物である印である。
作業の記録
(2021年5月に「生引き」法を試すために1本だけ切り倒して、「生引き」法で繊維を採ってみた。)
2021年11月8日に5本(大宜味村での講習のために)
2本は花の咲いたもの(繊維はちょうどよかった)、
3本は伐採が早すぎたか(偽茎はまだやや青いところがあった)
2022年3月1日に5本(全8本*)
*午前中、最初倒した5本のうち、3本は直ぐに偽茎から芯が伸びてきたので、更に3本を倒した。
2023年2月22日4本
感想(2022年3月)
使っている糸芭蕉畑は、2008年末~2022年の間、ほとんど手入れをしていなかったので、腐っているものが多く、繊維を得るために使えそうな糸芭蕉が分かりにくくなっている。2008年以前には糸芭蕉畑をほぼ毎日観察していたので、倒す糸芭蕉の選定に困難は感じなかったが、今は繊維を得るために倒していい適切な糸芭蕉を選ぶのは難しいと思っている。
倒す糸芭蕉の外皮が茶色になっている(十分成熟している)ものを選んだと思ったが、午後(倒した2時間後)切り倒した5本の偽茎のうち4本から既に芯が伸びていた。その糸芭蕉はまだ成長中であったということで、倒すのが早すぎたかと思う。
※新しい場所を探して、糸芭蕉の苗を植えた方が良いが、それらの糸芭蕉が使えるのは2,3年後となる。
糸芭蕉畑を若い時から常に観察・管理すれば、糸芭蕉の年齢が分かりやすく、倒す糸芭蕉も選びやすいと感じている(現在2022年6月)。
③ ウー剥ぎ
ポイント
偽茎を手に持って、その根元(太いところ)を上にする
茶色く乾燥している外側の皮を剥いで捨てる(肥料になるので、畑に戻す)
白い皮を剥ぐ前に「口割」を入れる。各皮は2層があるので、その層の間にナイフを入れて、2センチくらいの幅の「口割」を3、4本程度入れる
口割を入れた皮を剥いで、4種類(ワハー〔上皮〕、なはウー〔中苧〕、なはグー〔中子〕、キヤギ〔芯に近いもの〕)に分けてる。皮の口割を同じ方向に揃えて地面に置く
皮は、全て剥いだ後、各皮を2層に分ける。皮の口割の入っている部分(根本)を上にして、皮の先を足で押さえる。両手で繊維を含む皮の層(外側)とスポンジの層を引っ張りながら、皮の先まで分ける。最後は方足で2層を分ける。(スポンジの様な層を畑に戻す)
繊維を含む皮の層を束ねる。束ねるときは、各層の根本(口割の入っているところ)を同じ方向に片手に取り、1枚の層を使って束ねる。そして、束を2、3つに折って、同じ層を使って束を巻いて、最後にその層を束の間に挟める。
④ ウー炊き
ポイント
蓋付きのシンメーナービ(4枚鍋)〔又は5枚鍋〕を使う
雨水を使った方が良い
事前に木灰汁を用意する(木灰にはガジュマルの木の灰が良いが、最近、手に入りなくいので、他の木の灰でもOK)
灰汁のpHは11.6が良い。
皮を30分位その灰汁の中で炊く(煮る)
炊いた皮を水洗いする
手で絞るか裸足で水を切る
炊いた皮は、3日間以内、ウー引きをすれば良い。灰汁から出して、水洗いして、乾燥しないようにビニール袋などに入れて保存する。
灰汁作りが必要
自宅で繊維作りができるために、灰汁を用意しておく。
雨水を大きいバケツで貯めておく
木を燃やして、純粋な灰を貯めておく(ガジュマルの木など天然な木が良い)※私が使った灰は講師の金城由美子氏からいただいたものである。
pH試験紙を用意する ※昔、織り手たちが指で感触で確かめながらpH度を測っていたようである。
※ 南城市では一般の人には野焼きが禁じられているので、外で灰汁に必要な灰を作ったり、糸芭蕉の皮を炊くために木の枝を燃やしたりする事はできない。そのため、最初は「生引き」法で繊維を採ろうと思って、2021年5月〔梅雨〕にそれをやってみた。生引き法で得た繊維はやや硬く、編み物(草履、帽子)やタペストリ(飾りに使う布)などには良いが、(衣に使う)布には向かないと思っていたので、2022年からは、大型のガスコンロでウーを炊くことができる様にした。灰汁は、野焼きをする許可を得ている近所の方から貰う灰で作っている。
感想
2022年3月:木灰汁に更に木灰をたすことではpHは上がらなかったので、どうやってpHを上げるのか分からない。
2023年2月:近所の人が割と純粋な木灰をくれたので、それを使って問題なくpH12の灰汁を作ることができた。ワハー(外の皮)を剥いだが、他の3種類を炊くのに3時間近くかかったので、ワハーのウー炊きを控え、その皮は生乾きにして夫にバナナ・アボカド畑で使ってもらうことにした。
⑤ ウー引き
ポイント
事前に竹バサミを作っておく(山原にある琉球竹が良い)
竹バサミは何本も用意した方が便利(ウーの不純物で竹が濡れて使いにくくなるので、どんどん替えたほうが良い)
竹バサミ作りが必要
竹バサミはよくできているものでないと、繊維をうまく引き抜くことができない。
自分の作業の記録
2021年11月:5本の糸芭蕉から採り出した繊維 合計 64.6 g(ワハー 19 g・ナハウー 24 g・ナハグー 14 g・キヤギ 7.6 g)
2022年3月:5本の糸芭蕉からの繊維 合計 84.2 g(ワハー 25.6 g・ナハウー 27.9 g・ナハグー 15.0 g・キヤギ 15.7 g)
2023年2月:3本の糸芭蕉からの繊維 合計 35.2 g(ワハー無・ナハウー18.8 g・ナハグー 12.6 g・キヤギ 3.8 g)【写真アルバム】
2023年4月:2本の糸芭蕉からの繊維 合計 42.6 g(ワハー 12.2 g・ナハウー 12.5 g・ナハグー 11.2 g・キヤギ 6.7 g)
感想
良い竹バサミを作るにも練習が必要である。
「ウー引き」の途中で何度も修理しなければならなければ、作業が進まなくなる。事前に何本か用意した方が良い。
⑥ ウー績み
乾燥している繊維を水に浸しておく(少なくとも30分位)
黒い布と籠と安全カミソリを用意する
家の中で作業する(糸は軽いので、外では風で飛ぶ)
繊維を糸状に割いていく
糸の根元(太い部分)を右に持って籠に入れてから、糸の先(細い部分)に次の根元を機結びで繋げる
細すぎる部分や揃えていない部分を切り捨てる
※ 非常に時間がかかる作業なので、年中、毎日、少しずつやった方が良い。
自分の作業の記録
2021年11月30日
糸作り:金城由美子さんは「ウー績み」と「糸の管巻」のやり方を教えてくれた。
2021年11月のウー炊き・ウー引きで採った繊維・糸の重さ
(1)キヤギの繊維 7.6g > 芭蕉糸
(2)ナハグーの繊維 14g > 芭蕉糸
(3)ナハウーの繊維 24g > 芭蕉糸 20.4g
(4)ワハーの繊維 19g > 芭蕉糸 16.6g
※ 芭蕉糸が十分に集まった段階で、次の作業を追加する予定です。